ニュースの概要

韓国・京畿道の東豆川市と抱川市が、共同で進める生涯学習事業「Podong L.I.N.K Learning Partnership Belt」で、第23回韓国生涯学習大賞の首相賞を受けました。両市は高齢者が人口の28%を超え、人口減少と中心市街地の空洞化という同じ悩みを抱えています。そこで市の境界を越えて、大学や地域ごとの「学習村」と手を組み、学びの場や講師、教材を互いに使えるようにしました。高齢者や住民がデジタル技術を学ぶ機会も広げています。単独の市では支えきれない学習の土台を、2市が分け合ってつくった点が評価されました。

引用元: 高齢化と地域衰退に対応する韓国・東豆川市と抱川市の生涯学習連携が首相賞(Seoul Economic Daily)

分析・見解

高齢化率28%超の2市が、境界線を越えた理由

東豆川市と抱川市は、どちらも京畿道の北部にあります。人口は少なく、高齢者の割合は28%を超えています。日本で言えば、超高齢社会の中でも高めの水準です。

こうした市が単独で学習講座を続けようとすると、すぐに壁に当たります。講師の確保、会場の維持、教材の開発。どれも固定費がかかり、受講者が減るほど一人あたりの負担は重くなります。2市が学習資源を共有すれば、この固定費を半分近くに分けられます。受賞の本質は、見栄えのよい新事業ではなく、この費用の分け方にあると考えます。

大学と学習村を結ぶ、三層の仕組み

事業名にある「Belt」は、点在する学びの拠点を帯のようにつなぐ発想です。軸になるのは大学、地域の学習村、そして住民です。

大学は専門知識と講師を持っています。学習村は、住民に近い身近な学びの場です。住民は受講者であると同時に、地域の知恵を教える側にもなれます。この三者を行き来できるようにすると、学びは「上から下へ配る講座」から「地域の中で回る仕組み」に変わります。

日本の公民館や市民大学も似た役割を担ってきました。ただ、市町村ごとに完結しがちで、隣の市の講座に参加しにくいことが少なくありません。境界を越える手続きの簡素さが、実は成否を分けます。

デジタル教育が高齢者の外出理由になる

この事業では、高齢者や住民へのデジタル教育も進めています。スマートフォンの操作や行政サービスの利用を学ぶ講座は、単なる技術習得にとどまりません。

学習の場に通うこと自体が、外出の理由になります。人と会い、話し、教え合う時間が生まれます。中心市街地が空洞化した地域では、人が集まる理由をつくること自体が街の再生策になります。学習を福祉とまちづくりの両面で捉え直した点が、独自の視点だと思います。

成果の測り方が次の課題になる

受賞は評価の入口にすぎません。次に問われるのは、参加者数ではなく、学んだ人がその後どう動いたかです。

例えば、デジタル講座を終えた人が地域の店で電子決済を使い始めたか。学習村で教えた経験が、新しい役割や収入につながったか。こうした変化を追えば、学習予算の効果を住民にも議会にも説明できます。連携の範囲を広げるときも、数字の裏づけが説得力になります。

ビジネスへの影響

自治体と企業は、学習資源の共有から始められる

日本でも人口減少が進む地域では、研修会場や講師の確保が悩みです。近隣の市町村や大学と、会場や講座を相互に開放するだけでも費用は下がります。まずは既存の講座を2つか3つ選び、他市の住民も受講できるようにする小さな試行が現実的です。

企業にとっても、地域の大学や学習拠点との連携は人材育成の近道です。社員のリスキリング(=新しい仕事に向けた学び直し)を社内だけで抱えず、地域の講座と組み合わせると、講師費用を抑えながら選択肢を増やせます。

高齢者向けデジタル教育は新しい市場になる

高齢者がデジタルを使えるようになると、通販、金融、医療相談などの利用が広がります。教える仕組みを整えることは、将来の顧客を育てる投資でもあります。

地方の金融機関、通信会社、小売業は、自社の店舗を学習の場として開放する選択肢があります。講座の運営を自治体と分担し、成果を共有すれば、店舗への来訪や口座利用の増加として回収できます。実施前に、参加者の継続率と利用開始率を測る指標を決めておくことが肝心です。

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